死者の結婚式 55-1

もならないんだ」
 櫻井は、胸が痛んだ。智美が殺されたというのに、まだ何の手がかりもない。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだな。これからどうする?」
「挨拶も兼ねて一ノ瀬さんの家に寄って行こうかと思っている」
「その時に、最近何か変わったことがなかったか、聞いてみたらどうだ?」
「ああ、そうするよ」
「俺はマッサージをしてもらいに行く。何だかこの頃、肩が重くて鬱陶しいんだ」
 二人は、坂で滑りやすい砂利道をよけながら、来た道を引き返した。



 智美が住んでいたマンションは、新小岩駅南口の公園の近くにあった。十階建てのマンションに母親と二人で暮らしていた。弟は、高円寺に部屋を借りて住んでいるということを以前、智美から聞いたことがあった。
 玄関に並ぶ郵便受けで、一ノ瀬の名前を確認してから、エレベーターで六階に上がった。蛍光灯の光る廊下を歩く。六〇四号室の前まで来ると、ネクタイを結び直し、髪を直した。 智美の母親に会うのは、今日が初めてだった。ベルを押す。耳を澄ましていると、部屋の中で人の動く気配がした。
「はい、どなたですか」

theme : 今日のつぶやき
genre : 日記

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